「聴こえたのは蠅の羽音」


 「聴こえたのは蠅の羽音」

Emily Dickinson 

日本語訳 yuko (གཡུ་སྦྲང་།)


わたしがこの世を去る時 

聴こえたのは蠅の羽音

部屋の静けさ それはまるで

嵐のうねりの狭間にある 空のごとき静けさ

まわりには 絞り出されたあとの

乾ききったいくつもの瞳

それらと呼吸がひしとひとつに集まっていた


部屋の中 抗えぬ かの王の存在に気づいた時

それは最期の時が訪れたしるし

譲り渡せるわたしのものすべて手放し

忘れ形見として遺して逝こう


するとそこに-

そこに視界を邪魔する蠅がいた

先にある光とわたしの間で

愁いを帯びた 不確かに行き来する羽音

そのとき視界は遮られた

見えていたのか それとも見えていなかったのか

それさえも気付かぬままに



Original poem:

 I heard a Fly buzz – when I died – (591)

 By Emily Dickinson


Tibetan translation≫Click here

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